新型vs旧型ロボティクス:双方の変化の状況

Dr Khasha Ghaffarzadeh
新型vs旧型ロボティクス:双方の変化の状況
旧型(既存の)ロボティクスは成長しています。実際、ほぼ間違いなく成長のスーパーサイクルのただ中にあります。これはひとえに中国での需要によるものです。中国は既にロボットの主な購入国であり、そのロボット密度はまだ平均を下回っているとはいえ、その分将来の成長余地が大きいと言えます。
 
これと並行してロボティクスの世界における変革は基本的に3つの主軸―「協調性の向上」「自律移動の向上」「知性の向上」―に沿って進行しています。この変化は自動化の未来、ひいては、ロボティックスの未来を形作るものです。
 
IDTechExが調査レポート 「新型ロボット&ドローン2018-2038: 技術、フォーキャスト、プレイヤー」で予測しているように(下記参照)、新型ロボットは低ベース(2018年には2%)から始めるにもかかわらず、2028/29年には市場の半分以上を占めるようになります。 これは旧型(既存の、または伝統的な)ロボットも急速に広がることを考えるとさらにエキサイティングです。
 
ここでは今後の状況を解説します。この分析は調査レポート「新型ロボット&ドローン2018-2038: 技術、フォーキャスト、プレイヤー」からの抜粋です。この調査レポートでは6つ以上のカテゴリーの新型、旧型およびドローンを解析しています。このレポートでは技術ロードマップ、アプリケーション分析、主要イノベーターおよびプレイヤーのプロファイル/概要を提供します。 当社はまたこの分野における短期、中期および長期の可能性のある開発を網羅し、向こう20年間におよぶ市場予測を提供しています。
 
The world of robotics is changing. New robotics will rise from a nascent base to dominate the market in the medium- as well as the long-term. This rise will represent an enormous transformation in automation technologies, affecting numerous studies. This will create numerous opportunities but also threats. Note that for our aggregate value for existing robots in our report we include industrial robotic arms, surgical robotic arms, milking robots, 3D printers, partially autonomous tractors (level 3 and 4), AGV/ACGs, robotic vacuum cleaner and lawn mower and other similar categories. For new robotics, we cover the rest of the 46 categories. Note that on-road autonomous passenger cars and mining vehicles are excluded from this figure. For more details consult New Robotics and Drones 2018-2038: Technologies, Forecasts, Players

旧型(既存の)ロボティクス: 一般の想定以上に多様化が進行

旧型ロボットは一般的にはロボットのみの産業環境において正確な反復作業を実行する静止ロボットアームと関連しています。 ここが主要なマーケットです。 以前の記事 ではこの主要なダイナミクスについて解説しました。 ここでは代わって既存ロボットの産業用ロボットアーム以外についても解説します。
 
Old (or existing) robotics is more diverse than at first meets the eye. Within stationary robotic arms we have many sectors beyond industrial use cases: medical, collaborative, milking, etc. Within automated or autonomous robots, we have automated guided vehicles/carts, tractors (level 3 and 4), robotic cleaners and lawn mowers, and several other technologies. For airborne robots, we have line-of-sight consumer drones. Photos above, in no particular order, are from Kawasaki, Mitsubishi, John Deere, Intuitive Surgical, Amazon, 3DR, Kuka, Xiaomi, Parrot, Yuneec, Garford, Maytronics, Neato, Lely, Bosch, Honda, Walkera, SSI Schafer, etc. For more details please refer to New Robotics and Drones 2018-2038: Technologies, Forecasts, Players.
工業用途にとどまらない固定ロボットアーム:まずはロボットアームについて。 3Dプリンター、外科用ロボット、搾乳ロボットなどがあります。 3Dプリンターはすべてではありませんが直角座標系設計に基づいています。かつて大々的に宣伝された当該市場の一般消費者分野が、今ではコモディティ化にとどまらず販売の落ち込みにすら直面している一方、専門分野では、3Dプリンターの生産性が向上していることから、成長は継続する見通しです。
 
外科用ロボットはすでに米国や欧州を中心に大きな成功を収めています。 今日一社が市場を支配し、健全なマージンを獲得しています。したがって、手術用ロボット市場の短中期的なトレンドは(a) シェア獲得を狙う後続企業の台頭、そして(b)新しい治療・分野でのロボット利用拡大の試みと考えられます。
 
搾乳ロボットは既に商業的に重要な成功を収めています。 これについては以前書いていますし、詳しくは調査レポート「農業用ロボット&ドローン 2018年-2038年」参照してください。
 
既存の自動運転・自律型ロボット: すべての既存ロボットが固定ロボットであるとは限りません。自動化されたインフラ依存の無人搬送車(AGV)や無人搬送台車(AGC)は、1950年代以降、工業、物流倉庫の現場で使用されてきました。現在、これらの市場は、サプライヤーやユースケースによって細分化されています。市場規模は当面の間は順調に推移すると予測しています.
 
しかし変化は現れています. 実際当社ロードマップはインフラに依存しない自律型(vs自動運転型)移動ロボットの優位性がますます高まり、固定型のAGV/AGCを徐々に衰退に追い込むと指摘しています(注: ただし、物流倉庫等で用いられるAmazonの倉庫ロボットKivaのようなグリッド上を動くAGCの展望は引き続き明るい見通しです)。
また、より自律性の高い(vs自動ナビゲーション型)ロボットも長く大量生産されてきました。家庭環境を例に挙げると、ロボット掃除機は長きにわたって市販され続け、既に10億ドル規模の市場に成長しています。初期のロボット掃除機は室内をランダムに走行するだけでしたが、その後より知的な体系化された経路計画機能が搭載され、今では新しいスマートホームのエコシステムの中心に位置づけられています。
 
現在、ロボット掃除機のトレンドは(a)コモディティ化の拡大、(b)IPブロックによる競争抑制の試み、(c)アジアにおける成長の3つです。こうしたロボットは今後、サイズ、出力、生産性においても向上し、プロ仕様・商業用途の掃除機への道が開かれるでしょう。
 
Our definition of existing robotics in this report also includes partially autonomous (level 3 and 4) tractors. Indeed, as we have previously written, agriculture is the leading adopter for autonomous mobility technology. For sake of brevity we will not cover the details but refer to Agricultural Robots and Drones 2018-2038: Technologies, Markets and Players.

新型ロボット: 協調性・自律性・知性の向上

新型ロボットは更に協調性を増し、自律して、さらに知性が向上します。さらに詳しくは 「新型ロボット&ドローン2018-2038: 技術、フォーキャスト、プレイヤー」をご覧ください。
 
New (or emerging) robotic and drones include a diverse array of technologies and use cases. Various examples are shown above. In general, new robots will be more autonomous, more collaborative and more intelligence. The robots shown above are, in no particular order, from Avidbot, Metral Labs, Pal Robotic, Starship, Simbe, AliBaba, Yamaha, ZipLine, Blue River Technologies (now John Deere), Bossa Nova, RowBot, FF Robotics, Fellow Robot, Keonn Technologies, MiR, InVia Robotics, Lely, EarthSense, AGCO, 4D Retail, RFSpot, Knighstscope, IAM Robot, Bosch, Automation Solutions, GreyOrange, SMP Robotic, Harvest Croo, Colbalt, Sensense, Gamma2Robotics, TwinWheels, Sharp, Ahteon, LG, Savioke, Otto, Dispath, etc. For more details please refer to New Robotics and Drones 2018-2038: Technologies, Forecasts, Players
 
人とロボットの協調性向上: 今日ほとんどのロボットはロボット以外立ち入り禁止のエリア内で稼働しています。産業用ロボットアームはケージに入れられグリッド上を走行し、作業者に荷物を運ぶAGCがロボット専用エリアを動き回り、従来型のAGV/AGCは明確に定義された誘導経路以内での移動に厳しく制限されています。
これとは対照的に新型ロボットは人間との環境共有が進んでいます。協調型アームは作業者のそば、あるいは折衷式に配置されます。こうしたロボットは作業者との接触を回避するための複数のセンサーが搭載されています。また仮に衝突が発生した場合でも怪我をしないようにロボットの運動量や積載質量が低く設定されています。こうしたロボットが自動化に新たな作業をそして中小企業に自動化をもたらしています。現在すべての大手ロボット企業は協調型アームを導入しています。当社はこの協調型アームの力強い成長基調が継続すると予測しています。
 
AGV/AGCは更に自立化していきます。その結果、工業、物流倉庫区域の専用エリアを超え、ショッピングモール、オフィス、駐車場、道路脇の歩道、医療施設、空港等の日常空間に至るまで普及が拡大します。これはロボットが人間の日常生活の一部になり得るという点において、劇的な変化となるでしょう。
 
自動移動性の拡大: 今日(すべてとは言わずとも)ほとんどのロボットは、固定型で決まった誘導経路を走行するか、自律型でも有人の限定自律型(レベル3またはレベル4)ですが、将来的には無人自律型となり多くの産業に多大な影響をもたらします。
 
何点か参考になるケースを見ていきましょう。物流倉庫や工業用地においてAGV/AGCは自律移動ロボット(AMR)に徐々に移行します。その移行の原動力となるものはAMRの多機能性の強化と設置時間の短縮です。
 
また、自律移動技術は産業用車両業界(フォークリフト、タグボード)にも浸透し、これまで人間が提供してきた操縦サービスに対して毎年支出されてきた賃金給与の一部を車両メーカーが得ることができるようになります。実際、当社は一部のフォークリフトメーカー大手が保守的となっている現状を踏まえても、2022年~2023年以降に自律型フォークリフトが登場し、2037年には70%が自律型となるまで成長すると予測しています。
 
配送については、その固有の生産性に関する課題に対処するためにラストワンマイルを担うロボットを現在開発中であり、無人かつ自律的であることがその成功の鍵となっています。個々のロボットが低速で小型であっても、これらの自律型ロボットは高い生産性とコスト競争力を達成できるからです。 主な理由は自律移動技術により、単位当たりの運転手の賃金が大幅に削減されるためです。
 
今、こうしたラストマイルの配送を担うロボットが世界中で実験運用されています。現状、運用の場は大学のキャンパス等、体系化された、あるいはあまり混雑していない屋外環境に限定されているケースがほとんどですが、将来的には経験を積むことで、より複雑な環境での走行の熟練度が向上し、より一層多様な公共の場所への普及が進む見通しです。
 
同様のトレンドがさまざまな現場で発生してします。実際、自律移動技術の向上に伴い、屋外、室内のセキュリティロボット、販売アシスタントロボット、在庫管理ロボット、医療機関用ロボット、ホテルデリバリーロボット等の運用が始まっています。さらに農業の現場でも無人自律型ロボットによって、遅く軽いロボット集団が、速く重い2、3台のトラクターに取って代わる状況が生まれつつあります。
 
当社の技術ロードマップと予測はこれらのAMRが普及することを示唆しています。一般消費者向けのドローン産業と同様にハードウェアプラットフォームのモジュラー化、コモディティ化の到来が見込まれます。異なる業界のAMR用のハードウェアを大量に供給する1社(あるいは数社)が勝ち組となるでしょう。ソフトウェアプラットフォームの供給もまた、ロボット用自律移動オペレーティングシステムに似たソフトウェアプラットフォームの開発企業数社により、統合される可能性があります。
 
ソフトウェアをカスタマイズし、ロボットによるサービスを提供する大きなチャンスは常にあるとはいえ、エンドユース市場が細分化され、各業界に固有の特異性がある中で、コモディティ化は簡単に進まないでしょう。
 
自律性の向上はロボットに限定されないことは興味深いかもしれません。 ドローンもますます自律的になります。 これは個々のドローンに必要なセンサー数を増加させます。ドローンは既に単なるリモートコントロールによるコミュニケーションのいち手段から、各種IMUによる飛行の安定化、GPSによる通過点の追跡、カメラや超音波センサー等による物体回避に向けて進歩しています。今後、最終的には法律も整備され、見通し外のドローンナビゲーションが実現されるでしょう。
 
知性の向上: 従来、ロボットは限定された環境では繰り返し作業を行ってきました。 具体的かつ明確な指示(スクリプトまたはコード)が与えられます。 これらはすべて変化していきます。新型ロボットは基本的に人工知能(AI)を物理的に具現化したものであるため、AI分野の進歩が追い風になります。
 
特に、データと計算力(GPU等)を起爆剤とするディープラーニングは、ロボットの知性を前進させています。この技術によりこれまで、スクリプト化(またはコーディング)が難しかった特定のタスクをロボットが学習できるようになります。実際、ディープラーニングの向上は一般的に人間が優位な立場とされてきた、「握る」「認識する」「話す」等の基本的な低スキルの作業をロボットが奪う状況を可能にしています。現在のロボットの成功率は、人間がこれらの優位性を永遠には持ち続けないことを示唆しています。
 
いくつか参考例を見ていきましょう。倉庫保管において移動ロボットは原則的に運搬装置であり、ピッキングを担うのはいまだに人間ですが、当社の予測期間中にこの状況に変化が生じる見通しです。既にディープラーニング効果により、ロボットが奇抜な凹凸のある物体をつかむ成功率が93%を上回り、企業もこの進歩をフル活用しようと既に動き始めています。短期的には箱型のモノにフォーカスしますが、将来的には蓄積した経験とデータを元に、さまざまな業界において移動型プラットフォームを離れてもピッキングが可能な汎用移動型ピッキングに移行する見通しです。
 
農業分野では、AIによって伝統的な機械仕掛けのトラクター牽引器具のインテリジェントシステム化(各種移動コンピューターやセンサーシステムで構成)が実現しています。これらのインテリジェントシステムは、さまざまな雑草と農作物、さらには雑草の品種を識別しようとするものであるため、超高精度な場所特有の対応を可能にします。
 
しかし、このトレンドは農薬メーカーに重大かつ長期的な影響をもたらし、1種類の主流化学薬品の大量供給から特定分野に特化した多数の化学薬品の供給へと徐々にビジネスを変更させる可能性があります。言い換えれば、特殊化学薬品メーカーへの転身もある、ということです。
 
ここで取り上げていない膨大なケースが存在します。当社の調査レポート「新型ロボット&ドローン2018-2038: 技術、フォーキャスト、プレイヤー」 では新しいトレンドについてさらに深い解説を行っています。このレポートはロボットとドローンの世界における主要な変革に焦点あて、深く洞察しており独自のものです。 レポートでは46以上のロボットとドローンのカテゴリを分析しています。 技術ロードマップと20年単位のセグメント別市場予測を提供します。 また、各部門で働く主要なプレイヤーやイノベーターを特定し、プロファイルを提供します。
 
IDTechExの調査レポート 「新型ロボット&ドローン2018-2038: 技術、フォーキャスト、プレイヤー」はIDTechEx日本法人 アイディーテックエックス株式会社から購入できます。
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アイディーテックエックス株式会社
担当:村越美和子  m.murakoshi@idtechex.com
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