多機能性が高分子複合材料(ポリマーコンポジット)の未来を創る
2018年9月18日
繊維強化ポリマー製品にとって重要となる次の形は多機能性コンセプトでしょう。それは構造部品に今現在の基本的な力学的役割に加えてさらに別の役割を果たさせるという考え方です。スマート複合材料の市場は2029年には5キロトンを超えると予測されています。
繊維強化ポリマーは多くのセクターの市場において大きく成長し、複合材料に用いられる合成繊維の市場は2027年には90億ドルを超えると予想されています。この流れは望ましい特性の組み合わせ、中でも軽量素材の機械的性能によって突き動かされています。こうした製品の次なる重要なステップは多機能性のコンセプトでしょう。つまり、構造部品に今現在の基本的な機械的役割に加えてさらに別の役割を担わせる、という考えです。追加機能は電気や熱の伝導率の改善、埋め込みセンサやアクチュエータ、エネルギー貯蔵や環境発電、データ送信、自己修復、適応反応(モーフィング)メカニズムなど多岐にわたるでしょう。
Source: IDTechEx Research
IDTechExの新しい調査レポート 『多機能複合材料2019年-2029年』は基本的技術、主要企業、応用技術のすべてを網羅しています。商業化済みまたは商業化間近の技術についてのこの先10年の詳細な市場予測を行い、躍進を続ける主要企業についての情報も併せて提供しています。埋め込み機能付きのスマート複合材料全体の市場は2029年には5キロトンを超えると予測されます。
熱および電気伝導率の改善は既に商業的に採用されており、今後さらに勢いを増していく見込みです。本レポートでは伝導率改善へと至った多くの方法について調査し、中でもナノカーボンや金属種を添加剤、コーティング、マット、ケーブルに取り入れた方法について詳述しています。熱伝導率の牽引役は除氷、加熱工具、熱散逸でなかでもこれまでで特筆すべき例はGKN社がボーイング787のために開発した組み込み型の除氷技術の使用です。電気伝導率もまた輸送セクターによって牽引され、落雷防止、電磁波シールド、静電塗装、そして完全な電気回路として主に応用されました。
埋め込み型センサでは製造中も作動中も部品をリアルタイムでモニターすることが可能になります。構造健全性のモニターは剥離や亀裂、その他の機械的疲労を検知する狙いで作られた複合部品にとって能力が試される舞台と言えます。この分野では光ファイバーセンサ(FOS)や圧電基板など数多くの競争力のある技術が存在しています。特に目立つのはやはり航空宇宙防衛における応用ですが、石油・ガス、多層構造圧力容器なども見逃せません。本レポートでもその概要を伝えていきます。
IDTechEx patent analysis of structural health monitoring. Source: IDTechEx Research, Multifunctional Composites 2019-2029
環境発電とエネルギーの貯蔵は電化が進む輸送セクターにおいて重要な分野です。装置の表面に一体化されたソーラースキンが次々と発表されてはいますが、真の埋め込み技術が採用された環境発電装置はほとんど成功を見ていません。しかしエネルギーの貯蔵は重要な多機能開発です。IDTechExは2つの段階を予想しています。初めは複合層内に従来のリチウムイオン電池を埋め込み、最終的には複合材そのものに電池またはスーパーキャパシタの役割をさせるというものです。いわゆる「質量ゼロのエネルギー」という言葉を生みだしたのがこの二つ目の段階であり、そこには最大の長期的チャンスが存在しています。
複合部品によるデータと電力の伝達によってケーブルや信号が必要なくなり、堅牢かつ軽量なソリューションが実現する可能性があります。幅広い技術的アプローチを活用してそれを実現しようという試みが数多くあり、その範囲はカーボンファイバーに電気絶縁コーティングを行う開発から、異なる誘電体層間での表面波の伝播まで及んでいます。
埋め込みアクチュエータによる適応反応メカニズムは新しいコンセプトではなく、モーフィングや変形する翼の着想はすでに一世紀以上前からありました。しかし、能動型と受動型両方の新しい革新技術と展開試験によって本コンセプトはより実現に近づいています。
自己修復が何かの電気的機能を行うわけではありませんが、研究者の間で詳しく研究されており、エンドユーザーから高い関心を集めています。繊維強化ポリマーの自律的・非自律的、外部・内部での戦略と進歩について概要を示し、分析を行っています。
Source: IDTechEx Research
完全埋め込み回路と電子部品 はこの分野における最終的目標であると言えるかもしれません。本レポート 『多機能複合材料2019年-2029年』ではこの技術をインモールドエレクトロニクスと3Dプリントの両方に活用するさまざまな方法について取り上げました。上の図はより複雑なバルク構造へと進歩した流れを示したもので、すべてレポートで取り上げています。
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