フレキシブルワールド: 電池

フレキシブルワールド: 電池
2019年からフレキシブルエレクトロニクスの世界に突入していきます。そのためフレキシブルデバイスに電力を供給する電池に大きな注目が集まりました。こうしたデバイスには特殊な機械的性質やフォームファクターを持つ電池が求められるかもしれないからです。 IDTechExは薄膜電池、フレキシブルバッテリー、プリンテッドバッテリーに関する詳しい調査を行い、調査レポート『フレキシブルバッテリー・プリンテッドバッテリー・薄膜電池の世界市場 2019年-2029年』を発行しています。

フレキシブルディスプレイがさらに進化

2018年有機ELディスプレイ(OLED)産業は255億ドル規模に成長し、2019年には303億ドルに達する見込みです。2016年から2018年にかけて主に中国、韓国、日本、台湾を拠点とするパネルメーカーが150億ドルを超える投資をOLEDディスプレイ産業に行ってきました。これらの投資はより優れた画面と新しいフォームファクターを持つ製品によって差別化を図るために行われました。その中でプラスチックOLEDが(リジッドOLEDで)標準化し、さらに真にフレキシブルなOLEDディスプレイへと進化を果たし、初のフォルダブルディスプレイが商品化されました。
Flexible displays from (left) Visionox and (right) BOE. Source: IDTechEx
 
フレキシブルディスプレイではフロントパネルからバックプレーン、封入に至るまで、全部品での技術革新が求められます。これらの革新技術によりフレキシブルディスプレイの性能が向上し、フレキシブルエレクトロニクスの世界が実現するのです。

電力ソリューションがフレキシブルの世界の課題解決へのもう一つの鍵

フレキシブルエレクトロニクスの大部分はポータブルであり、電池が常にポータブル機器開発における制限要因となっています。スマートフォンのバッテリーが長持ちしないせいで、毎日、あるいはもっと頻繁に充電しなければならないのは誰もが経験しているとおりです。
 
鉛酸電池、ニッケルカドミウム電池からニッケル水素電池やリチウムイオン電池に至るまで、電気化学エネルギーの蓄積装置開発には時間がかかります。今日、最も商業的に成功した電池システムであるリチウムイオン電池はノートパソコンや携帯電話、タブレット、電気自動車などで広く使用されるようになりました。しかし電池技術開発はトランジスタのようにムーアの法則には従いません。本質的な制限があるためその改善には非常に時間がかかるのです。
 
今、電池にはまた1つ新たな要件が加えられています。フレキシブルエレクトロニクスデバイスに入れることができるフレキシブルバッテリーが求められているのです。このためにさらに開発の道のりは険しくなりました。しかし、この新しいフォームファクターによってさらに自由度の高いバッテリーの形が実現するかもしれません。たとえばもし電池を曲げたり折りたたんだりできれば、より大型の電池をデバイスに入れることが可能になります。そして一般的に電池が大きくなれば寿命も長くなるのです。

技術観点でも市場観点でも複雑な状況

主要な3つの要求項目:
 
1. 電池は安全でなければならない
2. 電池はより長もちし、より強力でなければならない
3. 電池は特殊なフォームファクターまたは柔軟性を有する必要がある
 
これらに取り組むため企業は2つの異なる角度からアプローチしています。1つは従来の電気化学からスタートして新しい価値提案を探るという方法。もう1つは特殊な属性およびフォームファクターからスタートして、その性能を高めるという方法。
 
そのため市場では様々な技術を目にすることができます。売り込みに使用される用語はインテグレーターやエンドユーザーにとってますます評価しづらくなっています。電池はまず機械的性質によって、フレキシブルバッテリー、ストレッチャブルバッテリー、ローラブルバッテリー、ベンダブルバッテリー、フォルダブルバッテリーに分類されます。またその技術によって固体電池、リチウムマンガン電池、アルカリ電池、銀亜鉛電池、ニッケル水素電池などに分類されます。そして特殊なフォームファクターではケーブル型電池、針型電池、マイクロ電池、大面積電池なども開発されています。製造方法では「プリンテッドバッテリー」がプレスリリースで度々登場しています。
Various batteries - Image sources: ProLogium, STMicroelectronics, Ecole Polytechnique de Montreal, Showa Denko Packaging, Samsung SDI, Theresa Chong/MEDILL, Enfucell, Imprint Energy, Arizona State University, Stanford University, Excellatron, Jenax, LG Chem, ilika, Blue Spark, BrightVolt, Qinetiq, Panasonic, Flexel
 
IDTechExは2014年からこの産業に注目してきたため、同産業がいかに複雑で従来の電池産業とはいかにかけ離れているかを理解しています。地理的にはヨーロッパと北米の新興企業の技術躍進が目覚ましく、東アジアの大企業は軒並み製造スピードを上げています。
Patenting activities by year from the top players. Source: IDTechEx

理想的な応用を目指して

薄膜電池、フレキシブルバッテリー、プリンテッドバッテリーを成功させる鍵は電池の持つ機能と制限に合わせて的確な応用を目指すことにあります。たとえば、数ミリ・アンペア・アワーしかないマイクロ電池はスマートフォンのバッテリーとしては不十分です。また、従来のリチウムイオンの化学的性質に基づくフレキシブルバッテリーの場合、小型機器用に小型化するのは難しいかもしれません。
Various targeting applications of thin, flexible and printed batteries. Source: IDTechEx
 
さらに詳しい、薄膜電池、フレキシブルバッテリー、プリンテッドバッテリーの技術、市場、プレイヤーおよび商業化への課題については、IDTechEx調査レポート『フレキシブルバッテリー・プリンテッドバッテリー・薄膜電池の世界市場 2019年-2029年』をご覧ください。
 
IDTechEx調査レポートを購入すると30分のアナリストタイムが提供されます。直接アナリストにレポートに関する質問が可能です。
 
IDTechExの調査レポート 『フレキシブルバッテリー・プリンテッドバッテリー・薄膜電池の世界市場 2019年-2029年』は、IDTechEx日本法人 アイディーテックエックス株式会社から購入できます。
 
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